Career Leaves ブログ

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AO入試対策:一所懸命にのめり込む

今回は、いつもとちがうコンサルティングFileです。 この秋、大学のAO入試を控えた高校生の保護者の方から、面接練習の依頼がありました。AO入試は、学科試験ではなく、面接や小論文などにより出願者の個性や適性を多面的に評価し選抜する入試です。大学入試対策は専門外ですので、私は適任ではないと一旦はご辞退しましたが、ビジネスパーソンの視点で面接の受け答えやプレゼンのしかたをブラッシュアップしてほしい、という趣旨でしたのでお受けしました。

大学の理系を志望する制服姿の男の子でした。ビデオ撮影しながら30分の模擬面接を行い、いっしょにビデオを見ながら修正点を確認しました。

彼は自動車が好きで、高校も自動車部があるところを選びました。生徒たちで自動車を組み立て、一定の距離を走行し、いかに消費した燃料が少ないかを競う、つまり燃費を競う競技があり、彼の自動車部は大会で優勝したこともあります。将来は、自動車会社で設計の仕事がしたいのだそうです。

自動車を好きになったきっかけを訊ねると、「物心ついたときからおもちゃの自動車で遊んでいました。それからずっと自動車が好きなので、何がきっかけだったか、覚えていません」と言います。愛読書はありますかと訊くと、「愛読書といえるほど読み込んでいませんが、本田宗一郎さんの本を読んで、自分もあんな風に自動車作りがしたいと思いました。」最近、尖閣諸島問題で日中関係が厳しい状況になっていますが、この問題についてどう思いますかと訊くと、「政治的なことは、私にはよくわかりません。ただ、日本車が燃やされているニュース映像を見ると悲しくなります」と。

すごいなあ。《一所懸命》とはこういうことかと感じました。 すべてが自動車の関心に繋がっているのです。ここまで徹底すれば、それは「芸」になり得る。自動車という一所(ひとところ)を掘り下げる先に、いつか突き抜けて、彼の視野がパッと拓ける日が来る。

つまり、点の知識や体験を積み重ねるにつれて、少しずつ点が線で結ばれ、面の理解や認識に深化、発展していくのです。その過程で、未知のことへの認識方法や新たなことへの挑戦のしかたなど、その人らしいアプローチのしかたを身に着け、それまで見えていたけれど見ていなかった世の中の風景や出来事の構造を、急に立ち現れるように認識できるようになる日が来る。専門性を追求するとは、そういうことなのだと思うのです。

思い起こせば、これまでお会いしてきた方々の中で、その人らしい一貫した何かを兼ね備えた方、ビジネスの世界で何事かの結果を残してきた方は、思春期から大学生くらいの間に、何かにのめり込んだ体験が大なり小なりあります。それは、小説だったり、映画だったり、ラジオの深夜放送だったり、ソフトのプログラミングだったり、スポーツだったり・・・。この話なら、一晩中でも語れる。そんなテーマを持つ人です。

そののめり込み体験が、ある種の成功体験となって、何か困難なテーマに直面しても、諦めずに探究し、試み、突破する。その原動力になっているのではないでしょうか。

自動車好きのその高校生は、来春、慶応義塾に入学します。