Career Leaves ブログ

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自分の課題をセルフカウンセリングする

キャリアコンサルティングに用いられるカウンセリング技法や理論はたくさんあります。今回は、そんなカウンセリング技法の中で、論理療法と呼ばれるものを紹介します。用語だけ聞くと、なにやら専門的で特殊なテクニックのように感じると思いますが、日常、皆さんがカウンセリング技法とは知らずに実行しているものの1つです。

論理療法では、エリスという研究者により提唱されたABC理論(ABCDE理論とも呼ばれます)が有名です。人は何かの出来事(Activating event)の結果から、不快な感情(Consequence)をいだくことがあります。それは、出来事から不快な感情にダイレクトに結びつくのではなく、何らかの価値判断をした結果としての信念(Belief)に基づき不快な感情に至る、というものです。ここまでがABC理論です。

たとえば、長年携わっていた商品マーケティングの部署から営業に異動を命ぜられたという出来事(A)から、その人が、左遷された、それならいっそ転職する方がよいかもしれない、という不快な感情(C)に至ったとします。その背景には、営業はマーケティングより下だ、自分は会社から評価されていないから異動を命じられた、営業の仕事など自分のキャリアには無意味だ、というような価値判断に基づく信念(C)があると考えられます。

この正しいとは言えない、または正しいかどうか不確かな、非論理的・非合理的信念に反論(Dispute)し、論理的に適切な信念に変えられれば、より前向きな気持ちで課題に対処できるという効果(Effect)が生まれます。ここまでくるとABCDE理論になります。

前述の例で言うと、部署異動で絶望している人に、本当に左遷なの、評価されていない結果なの?営業はマーケティングより下だと何を根拠に言えるの? 営業の現場を経験する方がより現実的なマーケティングができるようになるのでは? と反論(D)したらどうでしょう。その結果、確かに左遷とは言い切れない、仮にそうだとしても営業で結果を残せば評価も変わるはず、将来のことを考えたらここで営業の現場を経験するのはいいことかも、と不快な感情が和らげば、本人にとって前向きにキャリアを拓けるという効果(E)に繋がるのです。

キャリアコンサルティングでは、相談者がこのような非論理的・非合理的信念を抱いている場合、その修正にフォーカスして反駁を試みます。皆さんも、同僚や友人に何かを相談されたとき知らず知らずのうちに実行しているやりかたと思いますが、ABCの構造を意識できれば、より効果的にできますね。

この論理療法の考えかたは、自分で、自分のうまくいかなかった行動や憤慨するような感情の高ぶりを自己分析し、改善するのにも役立ちます。つまりセルフカウンセリングです。筆者自身の学生時代の苦い体験から説明します。

出来事(A):

大学時代、クラブを退部しようとしていた同級生の相談に乗ったことがありました。彼は誰かにいじめられたわけでもなく、内気な性格のせいか、疎外感を感じ、居ずらくなって自ら退部しようとしていました。その学生を思いとどまらせようと、会って話したり、手紙を送ったりして、説得を試みたのですが、結局、「僕のようなダメな人間には係わらないようがいいよ」と、退部してしまいました。

不快な感情・自滅的な行動(C)

こんなに親身になって悩みを聴き、アドバイスしているのになぜ受け入れないのか。なぜこの人は努力しないで自分自身を否定するようなことを言い、逃げてしまうのか。ここまで言ってもわからないなら勝手にしろ、と最後はこちらから絶交する、と言い捨てて私は去りました。

その背景にある非論理的・非合理的信念(B)

ものごとを論理的に説明すれば、人は理解し行動してくれるはず。そうならないのは相手がおかしい。私は相手の立場で、真心からいっしょに悩み、解決策を提示した。にも拘らず、私の期待する通りにならないのは許せないという独善的な信念があったように思います。

非論理的・非合理的信念への反論(D)

そもそも人間には論理的な思考・判断だけでなく、感情がある。その感情に響かなければ相手は動かなのではないか。論理的に説明したというけど、その学生が頭で分かっても動けないという、どうにもならない気持ちをきちんと受けとめたのか? 確か、「僕はキミみたいに強くないから・・・」と彼が呟いたことがあった。気持ちの部分を無視して、理屈だけで語っていたのではないか? 自分の、こうあるべき、という考えや価値を押しつけていただけなのでは?

論理的・合理的信念への修正

人間の心には論理的な思考・価値判断と感情がある。相手にこちらの言いたいことを伝えるためには、理屈で分かる部分と感情で分かる部分の両方を意識しなければならない。

効果(E)を産むために

自分はどうも、理屈の部分、つまり伝える内容の論理整合性にばかりとらわれ過ぎて、相手の気持ちを推し量る姿勢に欠けている。これからは相手の考えが適切かどうか、と共に、なぜ相手がその行動を取るのかを気持ちの問題として捉えることを意識しよう。

このように、自分で自分の課題の本質をセルフカウンセリングすることもできます。ABCを意識して、トライしてみてください。-----