Career Leaves ブログ

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偏差値エリートの岐路:働き甲斐の指標を求めて

「私の強みは顧客のニーズを把握して、状況を論理的に分析した上での提案力、内外と調整し信頼を構築してプロジェクトを推進するマネージメント力です。常に作業効率を考えてプロセスを改善し、結果を出せます。一方、ゼロから何かを生み出す企画力は弱いというか、経験がありません。既定のレールがあって、それをよりよく実行するほうが得意です。」挨拶もそこそこに、武田さんは準備した自己分析の結果を語り始めました。一つひとつ自分の考えを確認しながら、それでいてスピードのある喋りで、頭の回転の早さを窺わせます。

相談者のプロフィール

武田さんは、私立の名門中学・高校を経てストレートで一橋大学に入学しました。サークル活動のなかで、ホームページ作りを担当したことがきっかけで、インターネット業界に関心をもち、企業のホームページ制作やWebマーケティングを手掛ける企業に就職します。以来6年、Webディレクターとしてコンサルティング、食品、映画、旅行などさまざまな業界の大手企業のホームページ制作やEコマースサイトの運用に携わってきました。それぞれのプロジェクトで着実に成果を出し、Webディレクターとして順調にキャリアを積んできたかに見える武田さんですが、思い立って半年ほど前に退職しました。以来、精力的に転職活動を進め、延べ約90社に応募しました。いくつか内定も得たのですが、踏み切れずに辞退し、転職活動を続けています。

相談者の悩み

「自分が本気でなかったからだと思います。あまりモチベーションがないのに応募したり、きちんとその企業を調べずに面接に臨んだり…。職業に関して、こうあるべき、というのが自分にないのです」、とこれまでを振り返って、転職活動がうまくいかない原因を彼は分析します。

転職活動の前半3ヶ月、彼はWebディレクターからキャリアチェンジを試みました。企業内で環境関連を担当するポジションです。企業として環境問題に取り組むための企画書を携え、30社ほどを廻りましたが、企業側に採用のニーズがなく、大半は選考に上らなかったそうです。では彼の中に環境問題に関して強い関心があるのかというとそうでもなく、企業がまだまだ未着手の分野であり、その分未経験者の自分でも入り込む余地があるという判断からのアプローチでした。

蓄えも残り少なくなりました。転職活動後半の3ヶ月、まずは稼がなければ、とWebディレクターの経験を活かせる仕事にターゲットを変更し、応募を続けているところです。

課題の明確化

そもそも、なぜ前職を辞めたのですか、と問うと、「努力の先に、ステータスを求めていました。そのステータスとは、学校であれば順位であり、仕事では年収などの明確な数字です。収入にこだわっているわけではなくて、努力の結果を表す指標がほしいのです。しかし、仕事では成果と年収がイコールになるわけではありません。さらに先輩たちを見て、ゴールが見えてしまう。モチベーションが湧かなくなったのです」と言います。

中学、高校と、進学校に通う武田さんの努力の原動力は危機感と向上心でした。「成績が30位以内なら安心、でも100位になったら危ない、という危機感」から勉強に励みました。その向上心と持ち前の明晰な頭脳の結果、難関国立大学に現役合格しました。しかし、彼にとっては「大学に入ることがゴール」でした。大学では学問には興味が湧かず、「人前で目立つことをする、その陰には地道な努力が必要です。頑張って練習すればした分、うまくなるのが実感できる」と、あるサークル活動に熱中します。元来、目立ちたがり屋な彼の自己表現のエネルギーと、ストイックなまでに自分を追い込み努力する気質がマッチしたようです。

進学では王道を行き、日本の頂点の一つである名門大学に入学を果たしました。サークル活動では自己表現の達成感を得ました。その延長線上で、彼の危機感と向上心を発揮する場を求めて仕事に取り組みました。そして「職業に関して、こうあるべき、というのが自分にない」ことに気づいた彼がいます。単純明快な指標があって、その目標に向かい努力できたのは「余計なことを考えなくて済むからかな」と、彼が漏らしました。

今後の対応策

これまでの成功体験から、働く動機=努力の成果、という構図を求めすぎてきたことが、そもそも適切ではなかったのではないでしょうか。勉強での努力は、試験の成績という形で明確に表われます。その結果、偏差値の高い学校に進学すれば知的レベルの高い仲間と切磋琢磨しつつ、より高度な教育が受けられる可能性が高まりますので、成績という指標にこだわることが合理的です。そしてそれは、個人プレーの努力です。一方、仕事では努力の結果は売上や顧客満足などに表われ、最終的には社員個人の評価、そして地位や報酬に反映されます。ただし、あくまでも企業全体の収益や社員間のバランスを考慮して決められるものですで、結果に対して正比例にはなりません。個人の努力だけでなく、メンバー全員の努力の結果であり、その結果はマーケットの状況に左右されたりもしますので、その意味でも正比例ではありません。

学生時代のサークル活動も、転職活動で環境関連の仕事に焦点をあてたのも、「ニッチで、普通とちがう、目立つこと」に関心の軸があるからと彼は分析しています。少し頭でっかちに自己分析し過ぎているのかもしれません。もっと単純で、もっとナマな、こんな仕事をしてみたい、この分野に興味があるという彼自身の本質的な欲求を確認することが必要と思いました。武田さんにとってこれまでは、考える必要のなかったことです。それが見つかれば、努力の指標は成績などの数字ではなく、他者との比較による相対的な評価でもない、何か絶対的な、彼独自のゆるぎない指標として立ち現われるはずです。

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