Career Leaves ブログ

キャリアプランを真剣に考えたいあなた、失敗しない転職活動をしたいあなたと向き合い、共に考えます。

ライフ・キャリアを見据える

《キャリア》という用語を、私も、たぶん読者の皆さんも日常的に使っています。キャリア、またはキャリア形成ということばから、皆さんはどんなことを連想しますか。職歴、昇進、留学、転職、エリート、自分の専門を持つこと・・・。職業または働くことにまつわるいろいろなことを、きっとイメージすると思います。では、そもそもキャリアとは、何なのでしょう。

キャリアコンサルティングの世界では、「狭義のキャリア」と「広義のキャリア」の2つの定義があります。狭義のキャリアは、「職業、職位、経歴、進路」などで、ある個人の職業人としての生涯、または職業生活における様々な要素(資格、業績、学歴、職歴、技能)を意味し、さらに、これから進むべき進路や方向性を含むとされます。

一方、広義のキャリアでは、職業に留まらず、ある個人の人生・生きかたとその表現方法を指し、個人の人生のプロセスにおいて日々変化し、発達するものと捉えられています。言わば、《ライフ・キャリア》という発想です。ハンセンというキャリア理論の研究者は1997年、『統合的人生設計 Integrative Life Planning』でキャリアプランを家庭、教育、余暇などから切り離して考えることは不可能であり、仕事とプライベートの調和(ワーク・ライフ・バランス)が必要としています。

ハンセンのキャリア理論では、人生には《仕事》《学習》《余暇》《愛》の4つの要素があって、仕事だけをしていてビジネス上成功しても、豊かで幸せな人生が送れるわけではない。この4要素を統合して、総体としてどのような生き方をしたいのか、が最も重要な課題であり、「生きかた」の視点をキャリア概念の根底に据えるべきと述べています。

たとえば新卒で社会に出てから5〜10年は、目の前にある仕事を覚えたり、自分の職業上の適性を確認しキャリアの方向性を模索することが主要課題になります。独身時代でもありますので、ある意味、自分の将来のことだけを考えてがむしゃらに働ける時期です。この時期の生きかたと、それ以降の生きかたを考える要素は異なるはずです。

30歳前後になると、職業スキル上は一人前に仕事ができるようになり、責任ある仕事を任されたり、管理職ではないとしても後輩の面倒をみる立場にもなり、職業への視点が徐々に複線化します。人によっては、転職や留学などで新たなスキルアップの機会を求めるかもしれません。一方プライベートの面では、結婚というイベントに伴い夫婦関係の暮しに入ります。仕事のことだけでなく、出産・育児などの側面から自分の働く動機や人生の価値を見直さなければなりません。

30代半ばくらいから、会社組織における職責はますます重くなり、同時に職業スキル上の可能性と限界も否応なく自覚的に見えてきます。家庭生活は夫婦関係から親子関係へ、暮しの軸が移行し、更なる充実を感じることでしょう。半面、住宅ローンという経済的重しを担ったり、子どもの教育などで悩んだりもします。

40代、職業スキル上の可能性と限界はより明白になります。それまでの経験を活かして更なるステップアップを図れる人がいれば、閉塞感のなかで自身のキャリアに悩む人もいるでしょう。子供の教育や夫婦関係で思わぬ障害に見舞われたり、親の介護も避けては通れない課題になります。多くの方にとって、いろいろな意味で「キャリアの危機」を迎える時期です。

50歳くらいになると、定年退職後を見据えて自身のキャリアプランを考えたり、早期退職で悩んだり、会社組織に身を置く人は、自身の役割と能力の狭間で葛藤する場面が多かれ少なかれ訪れます。親の介護も現実化します。子どもの独立や結婚に伴い家庭生活の環境も変化し、親子軸から夫婦軸の暮しに復帰します。

60代以降、多くの人は職業の第一線から退き、ハンセンの言う4要素のなかで余暇や学習が主要な位置を占めるようになります。中には、ボランティア活動やそれまでの職業経験を活かした社会貢献活動に生き甲斐を見つける方もいらっしゃるでしょう。いずれにしても日本人の平均寿命は80台半ばですので、「余生」などとは言えません。第二、第三の新たな人生の創造が求められます。夫婦の時間が増えますので、配偶者との関係再構築が大切な要素になります。

終身雇用・年功序列を基軸にし、働けば働いた分、収入が増えたり、昇進する時代ではなくなりました。出世や大きなビジネスを手掛けることが職業人としての絶対の価値、という時代でもなくなりました。前回はシャインの《キャリア・アンカー》という概念を紹介しました。個人のキャリアのあり方を導き、方向づける軸を「錨」にたとえ、何のために働くか、何を遣り甲斐と感じるか、など社会人人生において自己実現の拠り所となるものが誰にもあり、その錨を軸にしてキャリア形成を図るべきという考えかたです。その錨が、多様化する時代になったのです。

人生は様々な選択肢の中から、何かを選びとる決断と行動の連続です。がむしゃらに仕事に取り組み社会人力を身につける20代、結婚や子育てと仕事との両立を模索する30代、10年後を見据えて自身の方向付けが迫られる40代、50代・・・。それぞれのライフステージに応じて、自身のキャリア・アンカーを意識しつつ、都度柔軟にライフ・キャリアの設計図を見直す必要があります。