Career Leaves ブログ

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30代半ばの迷い・期待役割の変化に対応する

市場ニーズや経済状況の変化、技術革新により、業界を問わずビジネスそのものも企業の経営方針や組織も絶えず変化し、かつ変化のスピードがこれまでに比べ格段に早くなり、その度合いも大きくなりました。定年までこの企業に、と疑いもなく思っている方でも、自分自身の働く動機と企業側の期待にズレが生じ、転職という選択肢を含め悩むことが約40年の社会人人生の過程で何度かあるはずです。現職に留まり、企業が求める期待役割と自分自身の遣り甲斐の調和を図るか、転職によりそれを実現するかは、人材としての市場価値の問題であると共に、もっと本質的にご本人の生きかたの問題でもあります。

相談者のプロフィール

藤田氏(仮名)は36歳。新卒で日系メーカーに就職し、社内情報システム部門のエンジニアとして、そのメーカー固有の業務システム開発や運用に携わってきました。老舗メーカーとしての自社のステータスにも誇りをもっておられ、製品開発や営業のように華々しい仕事ではありませんが、縁の下で企業を支える仕事に遣り甲斐を感じて勤続13年目になります。結婚し、子の親になってからは、小さな不満はいろいろあっても、家族の幸せを第一に考え、堅実に勤務してきました。

相談者の悩み

数年前に、本社の情報システム部門がグループ企業の社内IT全般を運用する子会社として分社化し転籍になりました。それ自体は藤田さんにとって大きな問題ではないのですが、システム開発や運用の実務から、グループ企業への窓口役、言わば営業的な仕事にシフトしました。グループ化された企業間でよくあることにですが、自社用に最適なシステムを作るという発想から、同じ身内でありながら子会社としての利益を考慮しつつシステム提案するスタンスに変化したことが、これまでのようにしっくりきません。

システム開発の仕事にユーザーサイド(発注側)として携わり、システム開発会社や外部のITコンサルタントと仕事をしてきた経験から、メーカーのシステム構築を手掛けるITコンサルタントになれないか、と考えています。一方で、自分にそのスキルがあるのか、と不安を感じてもいます。

課題の明確化

藤田さんが取り組んできた社内IT部門の仕事は、在職企業固有のシステム開発や運用の仕事です。それらを現職企業の流儀で取り組んできましたので、あくまでも現職でこそ通用するスキルとして経験化されています。ITコンサルタントには幅広い技術知見に加えて、次々に案件をこなすスピードと体力、顧客との交渉力も求められますので、すでに36歳で、現職企業にどっぷり漬かった彼がキャッチアップしてコンサルタントの仕事に就くのは難しいのが実情です。実は藤田さんもそのことは薄々分かっていて、無理だということを確認したかったのが本音のようでもありました。

1つの企業に30代半ばまで勤務してこられた方は、よくも悪くも、知らず知らずのうちにその企業の文化や仕事の流儀に染まっています。社内の人間関係ができてきて仕事もしやすくなっていますし、内部事情や力関係を考慮してうまく仕事を進める術も身につけているでしょう。しかし、その多くはその企業でのみ通用する常識であり、他社では非常識のことが多々あります。転職とは、単にスキルや経験のマッチングの問題ではなく、さまざまなカルチャーギャップを受け入れ乗り越えつつ、業務推進に必要な新たな人間関係、信頼関係を構築することに他なりません。うまく新しい文化に馴染んで定着できることもあれば、職務遂行能力以外の流儀や対人関係の部分で躓き、力が発揮できずに再度転職を考えなければならなくなることもあります。

お話を伺って、藤田さんはそうしたリスクを取って転職にチャレンジする覚悟が、少なくとも今現在はないように感じられました。何よりも彼は、現職企業に愛着があります。

今後の対応策

ビジネスの有り様は常に変化し、かつ変化のスピードが早い時代になりました。事業部門のみならず、総務、人事、経理、情報システム部のように元々本社のコストセンター的機能を分社化・集約し、企業グループとして効率化とコストダウンを図る動きもその一つです。そうした変化に応じて、社員一人ひとりのキャリアパスや求められる役割も変化します。

30代半ばで情報システム部の現場リーダーの藤田さんに期待される役割も、開発・運用の実務から顧客であるグループ各社との調整役に変化しました。ならば、グループ企業内システムコンサルタントとして、自身のプレゼンスを創ることこそ、彼らしい、実現可能なキャリア形成の道です。情報システム子会社としての利益追求と、ユーザーサイドの各グループ企業の顧客満足と、難しい課題ではありますが、自社に誇りを感じ、エンジニアとして企業を支える自負をもっておられる藤田さんなら必ずできるはずです。

藤田さんは一瞬、ことばを詰まらせ涙ぐまれました。

彼は吹っ切れた、と感じました。長い職業人人生の中で、誰しも一度か二度は、去就に悩むことがあるでしょう。出るのも勇気、留まるのも勇気です。どちらの道を採るにしても、大切なことは逃げずに正面から悩み、考え、決めたことに誇りをもって振り返らずに前進する勇気です。