Career Leaves ブログ

キャリアプランを真剣に考えたいあなた、失敗しない転職活動をしたいあなたと向き合い、共に考えます。

自分史から働く動機を探る

最近の大学生の皆さんは、就活においてまず「自己分析」で適職を探るそうですね。その手法の一つが、自分史を辿ることと聞いています。職業体験がありませんので、それまでの自分を辿ることが、私共人材コンサルタントがいう、《棚卸》の作業になります。職務体験の棚卸というと、仕事の内容、成果・実績、その業務から学んだことなどに焦点を当てて考えます。その分、自分が感じる遣り甲斐やより本質的な働く動機をつきつめることなく、なんとなく分かった気になってしまいがちです。転職活動用に職務経歴書をまとめる土台としてはそれでもよいのですが、より本質的に、自分のキャリア形成の方向性を確認するためには不十分な面があります。

そこで提案なのですが、就業前を含めて《自分史》の観点でこれまでの出来事を見つめ直してはどうでしょうか。子供の頃や学生時代は、少なくとも社会人となった今に比べれば、賃金を貰っている義務感や世間のしがらみなどから離れて、思考し行動できていたことでしょう。その時期に、何を考え、または考えなかったか。何をして、そのことから何を感じたか、または感じなかったかを分析することは、自分の志向を確認する上で有効です。さらに、その観点でこれまでしてきた仕事を見つめ直すことで、自分がどんな環境で、どんな仕事に取り組めたときに遣り甲斐や喜びを感じるのかも突き止められます。そしてそれらは、あなたのキャリアの方向性を考える大切な要素になります。

自分史を書く、というと、何年何月に生まれ、どんな家庭環境に育ち・・・、と最初から順に掘り起こさなければならないように思うかもしれません。もしそうだとしたら、ひどく面倒で気の遠くなる作業ですし、遠い昔のことを細大漏らさず覚えている人はあまりいませんので、とっつきにくい作業です。もっと気軽に、覚えていること、思いついたことから始めればよいのです。誰にでも、強烈に印象に残っている出来事や、なぜか脳裏から離れないひとことや誰かの一瞬の表情など、さまざまな記憶のかけらが頭の中に無造作に散りばめられていることでしょう。まずはそうした記憶のかけらを拾い上げて、箇条書きでも、単語でもよいのでメモしてみてください。

初めはキーワードに過ぎない記憶のかけらを文字に起こす作業を通じて、引き出しの奥に埋もれている記憶が呼び戻され、ディテールが蘇ります。さらにそれらを文字に起こすことで、「ああ、あのときはそう思ったんだ」、「あの頃はそうすることが自分には大切だったのだ」、「当時は気づかなかったけど、父はたぶんこう考えたからそうしたんだ」、と気づきや思わぬ発見に繋がることもあります。そうした記憶を紡ぐ作業は、案外楽しいものです。初めはポツポツと、数行に過ぎない箇条書きや単語が、少しずつ文になり、文章に膨らんでいきます。

表現したいことが頭の中に錯綜していて、うまくまとまらない。そんなときは、自分で自分にインタビューするように、まず質問事項を書いてみてください。「その出来事はどんな状況でおきたのですか」、「あなたはどのような行動をとったのですか」、「なぜあなたはその行動をとったのですか」、「Aさんはどんな反応でしたか」、「それをあなたはどう感じたのですか」、「なぜそう感じたのですか」、「そのときのAさんはどんな気持だったと思いますか」という具合です。その質問に沿って自分の答えを書き、最後に質問文を削除すれば、意外にまとまった文章になります。自分史を書く作業では、独りよがりの考えや、自分に都合のいい解釈になりがちですが、この独りインタビュー方式の思考で進めることで、より客観的に自分を見つめることができます。

そうこうしているうちに、「小学生の頃のあの体験が、高校時代のこの行動に繋がっているのではないか」、「高校の時のあの体験が、自分が人事の仕事に興味をもつきっかけだった」など、個々の点に過ぎなかったエピソード群が線でつながることもあるでしょう。そうなればしめたものです。「では自分が今仕事でこう感じるのはなぜか」、「自分が仕事のここに遣り甲斐を感じる、または感じないのはなぜか」、とこれまでの体験を今度は逆に辿って、心に奥底に存在する何かを探る糸口にすることもできます。つまり、あなた自身の働く動機を確認し、これからのキャリアの方向性を考える土台にできるのです。

あなた自身にとって、辛い思い出や受け入れがたい記憶、忘れたい出来事もあるでしょう。そうした影の部分とも、できるだけ正面から謙虚に向き合ってみてください。それらを今の視点から見つめ、自分なりの解釈で確認できれば、それらを乗り越えられるはずです。少なくとも、「あのときはそうだった」、と冷静に受け止められるようになるはずです。自分史は他人に見せるために書くものではありません。あなたの明日をより豊かにするために、あなたがあなた自身を受け留めるために書くものです。

書き始めると、止めどなくなく溢れる記憶があれば、時間をかけてゆっくりと蘇る記憶もあります。まずは一気に、書けることを文章に起こしてください。その後はゆっくりでいいですから、思い出したら書き留める、という地道な作業を続けることで、あなたの自分史は意味ある形になります。やってみる価値はありますよ。