Career Leaves ブログ

キャリアプランを真剣に考えたいあなた、失敗しない転職活動をしたいあなたと向き合い、共に考えます。

20代女性の転機・結婚生活とキャリアチェンジを調和させる

20代後半、新卒で入社した企業で仕事に慣れ、一人前に実務がこなせるようになった頃、このままこの会社で、この仕事を続けることが自分にとって適切なのか、との思いが多くの方に過ります。その漠とした不安は、日々の忙しさに埋没し忘れ去られることもあれば、大きな疑問に発展し転職に踏み切る端緒にもなります。殊に女性の場合はより現実的で切実です。キャリア形成という課題に加え、結婚という人生の転機をきっかけに、将来の出産や子育てのことを含め、ご自身の職業人としての生き方を否応なく見つめ直すことになるからです。

相談者のプロフィール

内山さん(仮名)は28歳の女性。新卒で日系大手メーカーに就職し、国内営業を3年経験した後、英語力を活かして海外営業の仕事を3年続けており、今では海外子会社の事業管理も任されるようになりました。採用時、彼女は人事部門を希望していたそうですが、営業部門に配属となりました。明るく人前でプレゼンするのが好きで、顧客企業の年配の経営層の方とも、物おじせずに話ができます。辛い局面でも逃げずに仕事をやり切る頑張り屋の面もあり、営業向きの方という印象を私も受けましたので、採用担当者の適性判断は妥当だったと言えます。

相談者の悩み

営業の仕事は遣り甲斐もあり楽しいのですが、6年携わりある程度やり切った感が内山さんにはあります。近年は営業という本来業務の傍ら、自ら買って出で、就活学生への企業説明や内定者へのフォローなど、採用業務の手伝いも続け、採用人事の仕事にキャリアチャンジしたい気持ちが強くなりました。社内での異動を働きかけていますが、管理部門をスリム化する傾向がある中で、営業から人事への異動は現実には難しい状況だそうです。ならば転職により人事部門へ、と考えましたが、周囲の意見を聞くと未経験者では難しいとの見解がほとんど。人事でなければ海外事業に携わりたい気持ちがありますので、海外事業部門への転職も視野に入れ始めたところです。

内山さんは最近結婚し、3年後くらいまでには出産したいと夫とも話しています。出産のことを考慮すると、転職するなら今のタイミングで転職して2年くらいはフルで働き、その後産休を取るのがベストの人生設計とも考えています。

課題の明確化

内山さんが人事、殊に採用の仕事をしたいと思ったきっかけは、ご自身の就活でした。現職企業の当時の採用担当の方々と接する中で、自分もこんな仕事がしたいと思ったのだそうです。明るく物おじしない性格や、人前でプレゼンするような行為に楽しさを感じる資質から採用の仕事に関心をもつに至ったのでしょう。そんな彼女だからこそ、営業職としても順調に成長し、成果を挙げているとも言えます。一方、6年間の営業経験を経て、会社組織を動かすのは人であり、優秀な人材を集める採用の仕事にさらに意欲を強くし、転職まで考えるに至りました。

中途採用で求められるのは一言でいえば即戦力の人材、つまり経験者です。転職を手段に人事にキャリアチャンジするのは、営業職の彼女が感じているようにあまり現実的な選択肢とは言えません。売り手市場の時代には、20代ならポテンシャルで採用する企業がありましたが、今はどこも採用を絞り、募集を出していても採用条件にぴったり合う経験者でなければ書類審査すら通らない時代です。

メーカーの海外事業部門でしたら内山さんの現職の仕事ですので、転職を実現する可能性は十分にあります。しかし、それでは単なる横滑りの転職にしかなりません。現職企業の経営状況や職場環境に深刻な問題があるなら別ですが、そうでない限り、移るメリットはありません。

今後の対応策

キャリアチャンジを実現しつつ、結婚生活と調和させることが内山さんの課題です。現職の日系メーカーは歴史ある大企業で、今後の経営に課題はあるものの、産休を含む福利厚生が充実しており、社員も家族的でギスギスしたところが少なく、彼女にとっても概ね居心地のよい職場です。つまり、出産・育児と仕事とを両立できそうな環境があり、長期でキャリア形成を考えられる大組織です。数年後出産を計画していることを考慮すると、転職するなら確かに今なのですが、焦ってアクションを起こすのはどうか、と感じました。

それよりも、現職企業で彼女自身の働く動機を一致できそうな仕事にシフトできるよう、社内への働きかけを続けることです。人事部門の仕事には、採用のみならず、人事制度設計や評価、給与、労務管理などさまざまな業務がありますが、内山さんの関心領域は採用業務であり、その底にあるものは、人と接する仕事をしたいことや企業のよさをアピールしてよい人材を集めたいという動機です。そうした動機を活かせる仕事としては、採用人事のほかに広報があります。企業をPRする広報部門でしたら、営業職としてさまざまな役職の顧客と接し、交渉してきた経験も活かせます。もうしばらく、社内異動の可能性を探る価値はありそうです。

社内異動が実現できないと判断できてから、改めて転職の可能性を考えても遅くはありません。ただし、人生にはトレードオフも必要です。キャリア形成と結婚生活のさまざまな要素の中で、プライオリティの高い要素は何か。今を逃すと実現できないものと、少し先に延期できるもの、そして当面諦めるほうがよいものなどの整理と、戦術的な取り組みが必要です。人生のパートナーである夫と、じっくり話し合い、理解と協力のもとで、一歩ずつ取り組むことが前提になります。絶対的に正しい選択肢はありません。人それぞれ、ご自身が納得し選んだ道がその人にとっての正解です。