Career Leaves ブログ

キャリアプランを真剣に考えたいあなた、失敗しない転職活動をしたいあなたと向き合い、共に考えます。

転職成功者のその後を追う

筆者は前職で丸4年、人材紹介コンサルタントの仕事に携わりました。この間、単なるスペックのマッチングではなく、キャンディデイト(求職者)ご本人のできることとキャリア形成の方向性、パフォーマンスを発揮しやすい組織や社風などの相性を考慮して、この企業のこのポジションならご本人のキャリア形成に最適と判断したところを選んで紹介してきた自負があります。

入社が決まった方には、おめでとうございます、に続けて「キャンディデイトとしてのあなたには、できれば二度とお会いしたくありません。まずは1年、がむしゃらに頑張り、新しい職場で自分のプレゼンスを獲得すること。新しい経験がスキルとして結晶するには最低3年は必要です。腰を据えてキャリアを積んでください。」と必ず申し上げてきました。入社から3ヶ月経ったころに再度面談し、入社前のイメージと現状とのギャップを確認し、その企業に定着するために必要なアドバイスをします。その後も継続的に年1、2度連絡を取り合い、必要に応じてお会いして相談に乗るという活動を今も続けています。

では、そうしてキャリアを拓くための転職を成功させた、少なくとも入社の時点では成功したかに見えたキャンディデイトの方々がその後どうなったのか。これまで筆者の紹介で転職した方々が何年くらいその企業に留まっていらっしゃるか、数字にしてみました。結果は以下の通りです。

在職中 55% (3年未満在職 35%、3年以上在職 10%、4年以上 10%)
3年以上在職後に転職 0%
2年以上、3年未満勤務で転職 15% (全員自己都合退職)
1年以上、2年未満勤務で転職 25% (会社都合 15%、自己都合 10%)
1年未満で転職 5% (会社都合のみ)

1年未満で転職するというのは、理由の如何を問わずご本人にとっては転職先選択の失敗であり、紹介者である私にとっては判断ミスと言わざるを得ません。この1年未満で退職した方、および2年未満・会社都合でお辞めになった方の多くはある立ち上げベンチャーに転職し、経営状況が悪化した結果として解雇になった方々です。紹介段階でそうしたリスクがあることを理解していただいた上で応募し、入社しました。とはいえ、入社から2年未満でそのような結末になることを見抜けずに紹介したことは、コンサルタントとして私の責任でもあると感じています。退職時にお詫びに参上すると、多くの方は、「リスクは承知で選んだ会社です。あなたが気にする必要はありません」とおっしゃってくださいましたが、私にとっては痛恨の経験でした。

入社から概ね3年経過が、その企業に「定着」したかどうかの分岐点のようです。サンプル数が少なく、経過年数も4年半ですので統計的に有効な数字とは言えませんが、会社都合退職をはぶき、約30%の方が3年未満で何らかの理由により退職したことになります。在職中の55%のうち3年未満の方が35%いらっしゃいますので、その内の1/3が近い将来3年未満で退職する予備軍としたら、実際には約4割の方が転職後3年未満で再度転職する計算になります。これは予想以上に大きな割合です。私が主に担当してきたクライアント企業が、ビジネス環境の変化が激しく、人材の流動も活発なIT、インタネット関連企業ということがあるのかもしれません。

自己都合でお辞めになった方々にその当時伺った退職理由を思い出してみると、2年未満で退職した方では、会社の方針が変って自分のしたいことが今後できそうにないことが分かったため、という不満要素が主でした。一方、2年以上3年未満で退職した方では、よい経験を積み、実績も残せたというその人なりの達成感をバネに、その会社では実現できない次のステップに進みたいというポジティブな動機が多かったです。では3年以上在職している方が120%現状に満足かというと、そのようなことはありません。程度の差こそあれ、いくつかの不満や課題を抱えつつも転職を考えるほど深刻な問題はないという状態のようです。

改めて傾向を俯瞰すると、新しい企業に入って2年前後が、再度キャリアの見直しを考えるタイミングになり、入社した企業で先の見通しが立たない方は早めの2年未満で見切りをつけ、アサインされた業務に満足しているが更なるステップアップを目論む方はある程度実績を積んだ3年前後で再度転職に踏み切る。そして、社内でキャリア形成の見通しが立っている方、現状に概ね満足している方、または深刻な不満のない方は3年を経過しても辞めずに定着している、と言えなくもありません。

また印象レベルですが、企業側の期待役割とご自身のキャリアパスにズレが生じた場合、30代半ばくらいまでの方は解決の手段として転職という選択肢を取りやすく、30代後半くらいが分かれ目で、40代以上の方は、在籍企業の中でどう折り合いをつけるかという思考で課題に対処する傾向があるようです。実際、3年未満で転職した方の大半は30代半ばまでの方々でした。これは流動が激しいインターネット業界の人材を、筆者が担当してきたこととも関連するのでしょう。

筆者の場合、現在の人材コンサルタントになる前は、人材ビジネスとは異なる事業会社に1社目は9年、2社目は8年勤務しました。もちろん人それぞれの資質や在籍企業の状況に負うところもありますが、1社に腰を落ち着けてキャリアを積むという、かつて当たり前のことが難しい時代、言い換えると、一所で自分のキャリアを組み立てられないくらい変化の激しいビジネス環境になってきたことを改めて実感しています。