Career Leaves ブログ

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40代、50代の挑戦:人生の後半生を構想する

経営層や上位マネージメントとしての能力と実績のある方や、突出した技能をもった方は別ですが、人並みの経験と実績を積んできた多くの40代、50代の方々にとって、2008年後半以降の転職市場は絶望的ともいえる状況が続いています。2008年前半まででしたら、前職を退職後、3ヵ月から半年のうちにはご本人の満足の度合いはともかくとして、大半の方はどこか納まるところに納まることができました。今は1年、さらにそれ以上、転職先を探し続けている方々が珍しくなく、それなりに経験や実績がある方でも、採用のポジションがない以上どうにもなりません。

「気力、体力ともにまだあります。報酬も多くは望みません。生活できるだけ貰えればよい。働かせてもらいたい、自分はただ、働きたいだけなのです」と、悔し涙を流された50代前半の事業部長クラスの方を前に、人材コンサルタントとしての筆者は無力を感じました。50を過ぎた大の男が、恥も外聞もなく苦い涙を見せざるを得ない社会の現状とは何なのでしょう。

元々転職ということを想定していなかった方がリストラや倒産などにより転職を余儀なくされ、半年、1年、さらにそれ以上、定職に就けない。そうした方々は経済的な不都合のみならず、精神的な打撃も大きく、職が見つからない不安に押しつぶされ、精神の安定を失い心の病に陥る方もいらっしゃいます。これは中高年層に限ったことではありませんが、40代以上の方を受け入れる企業が激減した現状では、子供の教育費や住宅ローンを抱える中高年層にとってより深刻な問題です。

最近(2010年)、お付き合いさせていただいている40代、50代の方から、「起業しました」とのご連絡をいただくことが多くなりました。一例を挙げると、営業職として培ったノウハウとネットワークを活かして、営業力の強化を中心に中小企業支援のコンサルティングを始めた方がいらっしゃいます。Web関連の仕事はインターネットを介してできますので、SOHOビジネスとして成立しやすい分野なのでしょう。WebマーケティングやWeb制作実務の経験から、企業ホームページやEコマースサイト構築のコンサルティングを始めた方も何人かいらっしゃいます。

起業の動機は様々であり、かつ複合的です。それまでの仕事を通じて温めてきたアイデアであったり、培ったノウハウをベースに、所属企業の思惑や社内事情に左右されることなく、顧客に最適と思えるサービスを提供する自由を得たいという意志であったり、仕事一辺倒の生活は卒業し、社会人人生の後半はワーク・ライフ・バランスを取って働きたいという思いであったり…。そして、程度の差こそあれ、起業を決断するに至るまでには、在籍企業で自分の今後に希望が見出せないこと、かといって転職を試みても年齢からして再就職は難しいと思えること、または現に長く転職活動をしたが採用に至らなかったことが、多くの場合、事情の一つとしてあることも否めません。

現職企業に踏みとどまっている方々でも、早期退職制度の話を上司から持ちかけられて、去るも地獄、残るも地獄と逡巡し、相談に来られる方がいらっしゃいます。役割定年制度のある企業では、ある年齢に達するとラインのマネージメントから外されたり、関連会社に転籍させられ、それまで経験してきた仕事とは別の役割になり、残れるだけ幸せなのは分かっているのだが、自分にどう折り合いをつければよいのかと悩む方もいらっしゃいます。立場を換えて考えると、そうした「天下り」受け入れ側子会社のプロパー社員にとっては、自分たちのキャリアパスが減り、将来により深刻な不安があります。

昨今の不況がこうした状況をもたらしたわけですが、問題の本質は、私たちの多くがキャリア形成のありかたを自分自身の問題として考えてこなかったこと、または所属企業での組織の都合による人事異動をそのまま自分のキャリアパスと受け入れてきたことにあります。終身雇用が成り立っていた時代はそれでも大きな問題はなかったのですが、その前提が崩れ、経営側も有効な方策を打ち出せないまま不況の結果としてリストラという形で社員を放り出している現状です。

いずれの職場でも、経験豊かな社員が、経験を活かす場がなく気持ちが腐ったり、退職するのは本人が不幸なだけでなく、苦労して育て、企業にも貢献してきた貴重な人材を捨てることになりますので企業にとっても損失です。そうした人材の雇用を保証することも含めて、経営を成り立たせることが企業の社会的責任でもあると筆者は考えています。しかし、残念ながら有効な方策を見い出せないのが、多くの企業の現状でもあります。見方を換えると、それぞれの経験を活かして、40代以降も、自分が組織に必要とされている、貢献しているという遣り甲斐をもって安心して働けるしくみ、またはキャリアパスを実現できた企業は強く、目先の年収が下がってでも転職したいと優秀な人材が集まる魅力ある企業になるのではないでしょうか。

前回、「40代以降はやり直しが難しい世代」と書きました。正直に申し上げて、筆者には起死回生の一手が思いつきません。しかし、人生に遅すぎるということはないはずですし、もう手遅れだと投げだせるほどあなたの人生は軽くもないはずです。実際、日本人の平均寿命から考えれば、60代といえども「余生」とは言えませんし、余生と捉えてしまってはもったいないです。残るにせよ、出て再就職するにせよ、起業するにせよ、80余年の人生後半のこれから30年、40年をどう生きるか、そんな視点で会社員というよりも社会人として、人生というキャリアを再構築する意志と行動が求められています。

若いヤツはやり直しができていいなあ、自分もせめて10歳若かったら・・・などとボヤいていても始まりません。いま一度初心に立ち還って、社会人としての自分の存在価値や働く動機を再確認し、昨日までとちょっとだけ違う行動を起こしてみませんか。