Career Leaves ブログ

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30代の不安:この会社では将来像が描けない

30代の方々からよく聞く悩みは、「現在の仕事にも待遇にも概ね満足しています。少なくとも転職の動機になるような重大な不満はありません。でもこの企業では40代、50代になった自分の働く姿が描けないのです」という将来への不安です。

日本の伝統的大企業でも、50代前半で役割定年制を設けて役職から外し、グループ企業に片道切符で出向させたり、場合によっては閑職に回し早期退職を勧奨するのが日常茶飯事になっています。社員の平均年齢が30歳前後のインターネット関連企業では、終身雇用という概念は元々なく、40代以降その企業で継続して自分の存在意義を発揮しにくい環境にあります。日々技術革新が進み、事業もそれに伴い変化・進化するインターネット事業は、その性質上、常に若い血や新しい発想を必要としています。豊富な経験をもつ年長者の思考が新しい着想に必ずしも繋がらないこともあり、難しい面がありますが、特にそうしたビジネスに身を置く方々には、自分の5年後、10年後は切実な課題です。

インターネット業界を例に話を進めると、インターネット産業が勃興して10年余りになります。その当初、インターネットの無限の可能性に魅力を感じて飛び込んだ20代後半の方々も徐々に40代にさしかかり、ある方はやり尽くした感があり、ある方は第一線での仕事に行き詰まり体力や発想力に限界を感じ、また意欲があってもその経験に見合う管理職のポストは限られています。役職にはこだわらない、これまでの経験を若手の育成や仕事の標準化など、企業としての体質強化に役立てたいという方もいらっしゃいます。

経営側はその必要性を感じても、直接利益を産む仕事をどんどん回すこと、そのために適材適所に人材をアサインすることに精一杯で、コストセンター的機能を設定する体力も余裕もないのが現状のようです。社運を賭けて日々新たな取り組みにチャレンジしていますので、そうしたベテランを顧みるゆとりがなく、場合によっては役割を終えたお荷物に感じているかもしれません。必然的にベテラン社員は閑職に追われ、退職を勧奨され、または希望を失って自主的に去る道を選びます。若手社員にとってこれは他人事ではなく、苦悩する先輩方の姿に自分の将来を重ね、このままここにいてよいのか、同じ境遇になってからでは遅すぎる、30代の今なら転職もしやすい、と悩み始めます。

これまでインターネット業界の若手は、自社の経営陣つまり起業してここまできた成功モデルに自分の将来に重ね、低賃金・長時間労働でも頑張ってきました。しかし成功者は一部の優秀な、または経営陣から幹部候補と見い出された人々でしかなく、多くの先輩方が30代後半から壁にぶつかる姿を目の当たりにしています。つまり、否応なく自分の5年後、10年後について思いを致すネガティブなモデルが各職場に出現しているのが今のインターネット業界であり、今後、社員のキャリアパスや雇用をどう保障するのかが大きな課題になっていくものと思われます。

「私はシステムエンジニア(SE)の仕事を続けたい。でもどのように経験を積んでいけば、40代以降も会社に必要な人材であり続けられるのか」、とキャリア相談に来られたSEの方々の思いも切実です。システムエンジニアというカタカナ職業が注目を浴び始めたのは80年代の半ばです。当時、新卒でSEを目指した方々はすでに40代から50代にさしかかっていますので、前述のネガティブモデルも豊富です。

20代はプログラマーとして開発作業に取り組み、30前後でシステムエンジニア、その後はプロジェクトマネージャーや開発部門の管理職に移行していくのがSEの典型的なキャリアパスです。しかし、ラインの管理職のポジションには限りがありますし、仮にずっと開発現場に携わりたい方でも、いずれ体力の衰えを感じ、若いころのような徹夜も辞さずという働き方が難しくなります。40代以降のSEの方々には細い道しか用意されておらず、若手SEにとって、40代以降もエンジニアとして存在価値を保つために、今からどのような経験を積み、スキルを身につけるべきかがキャリア形成において切実な関心事と言えます。

インターネット業界やSEに限らず、30代でどのようなスキルセットを身につけ、実務として経験したか、または実績を挙げたかが、実際に40代以降のキャリアを決定付けます。言い換えると、40代以降はやり直しが難しい世代になります。どんな職業であれ30代は、一人前の人材として仕事の第一線で活躍を期待されています。日々の仕事において、その忙しさに安住することなく、または流されることなく先を見据えてスキルを身につけ経験を積むためには、自律的に自分らしいキャリアを形成する明確な意識と、それを実践する戦術が必要になります。