Career Leaves ブログ

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初めての転職・職業体験を経て適職を自覚する

自分にはこんな仕事が向いている、と明確に自覚して就活に臨める学生はまずいないでしょう。多くの場合、たまたまその時期に関心があった分野や、振り返って思い起こすとあいまいな根拠からある業界や職種に絞って応募したり、手当たり次第に100社以上の企業にエントリーしたりして、たまたま話が進んだところに就職するのが実情です。そうした、偶然巡り合った企業で具体的な職業体験を積む過程で、仕事の面白さや遣り甲斐を見い出し長く勤務する方がいれば、自分はこの仕事には向いていない、または自分はこんな仕事がしたいと自覚できるようになり、数年後に転職、本当の意味での「就職」を考える方もいらっしゃいます。

相談者のプロフィール

高野氏(仮名)は早稲田大学在学当時、金融業界が志望でした。それら本番の前に、練習のつもりでたまたま面接を受けた外資コンサルティング企業にそのまま就職し、32歳になりました。この間、大規模なシステム開発案件にITコンサルタントとして参画し、海外事業も経験し、部下数名のマネージャーになっています。コンサルティング業界はご本人の評価がダイレクトに役職や報酬に反映しますので、まずますの昇進です。社内にうじゃうじゃいる優秀なコンサルタントに比べれば自分はまだまだと感じているが、チームワーク作りや部下の面倒見のよさは評価されているそうです。

相談者の悩み

初めての転職活動なので、どのような手順を踏めばよいか教えてもらいたい、自分に合う仕事についてアドバイスしてもらいたい、というのが高野さんからの依頼でした。開発案件の現場に携わっていたころは、ITの視点から業務の効率化を企画しシステムを形にする手触りが実感でき楽しかったそうです。しかし、クライアントとの交渉や管理中心の仕事にシフトしてから、コンサルタントとしての彼に求められるのは、特定分野の高度な専門性ではなく、プロジェクトを次々にこなしていくためのジェネラルなスキルです。そこに違和感を覚えるようになり、コンサルティングではなく事業会社での仕事に、転職を考えるに至りました。

課題の明確化

高野さんが自覚しているように、ITコンサルタントに求められるのは、ジェネラルなスキル、スピードをもって様々な課題をハンドリングする能力です。プロジェクト・オリエンテッドな仕事の性質上、新たな分野の案件でも厭わず次々にこなし、プロとしての成果を出し続けなければなりません。しかし、「自分は心配性なんです。実はよく理解していないことでも、あたかも専門家のように振る舞うのがコンサルタントですが、やはり不安になります」と言います。

偶然に就いたITコンサルタントの職業体験から、高野さんは自分にとっての適職とはどのような性質の仕事かを自覚するようになりました。つまり、業務を通じて専門性を身につ け、それに立脚して経験の幅を拡げられる性質のものです。コンサルティングのような一過性の仕事の連続ではなく、一貫して取り組み成果の手触りを実感できる仕事であり、その仕事を通じてステップアップできるキャリアパスです。それに気づいた以上、転職という選択肢は彼にとって妥当なものと判断できます。

要は、自分が培ったどんな経験やスキルを武器にしていきたいか、どんな仕事や役割を求めて転職先を探すか、なのですが、その肝心のところが高野さんの中で整理できていないのが最大の課題のように見受けられました。32歳という年齢を考えると、現職に疑問を感じるのもやや遅すぎますし、元来、のんびり屋で現状を替えたがらない性格なのかもしれません。そのマインドを含め修正し、しっかりと準備をしてから転職活動というアクションを起こすべき、と感じました。

今後の対応策

30代前半のコンサルタント出身者に、採用を考える事業会社が期待することは、「異なる血」です。自社の同世代の社員にはない論理的な思考力や課題解決能力であり、コンサルタントとしてそれを実践し結果を残してきたことの証明です。書類審査用の職務経歴書にも、面接でのプレゼンでも、他の職業の出身者以上にそうした即戦力性が期待されます。

つまり高野さんが転職活動の準備としてしなければならないことは、コンサルタント出身者として、ご自身の価値を整理し、説明できるようにすることです。相談に来られた方々によく話すことですが、答えはご自身の中にしかありません。これまでの職業体験の中から、自分らしい何かを抽出する作業、つまり棚卸が必要です。そこで、彼には次の作業をお願いしました。

① これまで仕事をしてきた結果として、以下を整理すること。これは彼自身が適職を明確にする際のクライテリアの一部になります。

  • - どんな動機、モジベーションで仕事をするタイプなのか
  • - どんな仕事のアプローチが得意なのか
  • - どんな状況・環境下で仕事をするとパフォーマンスを発揮するか、居心地良く仕事ができるか。逆にどんな状況・環境下で仕事をすると力が発揮できないか

② 今後、彼自身が武器にしていく能力(転職に際して先方にアピールしたい能力)は何かを3つくらい、抽象的な内容でなく、事例を含めできるだけ具体的に整理すること。これが職務経歴書に書く「得意なこと(アピールポイント)」になります。

③ 上記を踏まえ、①②が読み手に浮き立つように、情報を取捨選択し、職歴の詳細をまとめること。これが職務経歴書の本文になります。

高野さんとのお付き合いは当分続きそうです。