Career Leaves ブログ

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20代の不満:年功序列の呪縛

成果への適切な評価と貢献度に見合う報酬を求めての転職も増えました。終身雇用制の崩壊に伴い、年功序列という日本の企業組織の秩序を支えていたシステムも少しずつ崩れています。年功序列は終身雇用を前提に、仕事内容や貢献度とはあまり係わりなく若いうちは低賃金に抑え、仕事上の役割も担当者レベルの下済みで、年を経るにつれ役割も年収も上がっていくシステムです。年収の面でいうと、企業に貢献した対価をその場その時に貰うのでなく若いうちは企業に預け、社歴を重ねてから年功という形で少しずつ、場合によっては利子をつけて返しえもらうシステムです。

外資系企業のみならず、インターネット業界に代表される新興産業やベンチャー企業など終身雇用、年功序列を前提としていない企業においてはいっそう、成果に見合う対価を求め、それが実現できそうにないときは転職により希望を実現するというドライな志向の方々が増えていることも事実です。名門と言われる大学を卒業して大企業に就職した方々の一部が、旧態然とした企業体質に飽き足らず、入社から数年で成果主義の新興企業に転出するケースも増えています。こんな仕事がしたいが、それができる役職になるにはあと10年以上先であり、とてもそれまで待てない、という焦燥と諦めが彼らにはあります。

ただ、そうした方々にとって報酬や役割が唯一最優先の価値基準かというと、必ずしもそうではないようです。多くの方々にとっては、自分にとって遣り甲斐のある仕事を安心して続けられる環境が大切なのですが、それが満たされない状況を感じ取って、結果的に報酬という即物的な面に重きを置かざるを得なかったり、年齢や社歴に係わりなく本人の努力次第でチャンスと対価が得られる環境を求めているというのが本音ではないでしょうか。

かつて終身雇用・年功序列が万能だった時代は、上司の命令に従う従順さと着実に遂行できる事務処理能力が新卒に求められ、強い自己主張は禁物でした。90年代のバブル崩壊とその後の就職氷河期の時代、いわゆる就活を迎えた学生たちは、企業側から、社会人・職業人として何をしたいか、どのようなキャリアパスを実現したいか、その意志表明を求められるようになります。彼らは就職したらこんな仕事がしたい、このように経験を積みたい、とたとえ拙いとしても一所懸命に考え、自分の意志を形成して内定を得たことでしょう。一方、入社した企業は旧態然として終身雇用・年功序列の世界です。もちろん、経験のない新入社員にその役割は任せられないという現実問題があるにせよ、新入社員が希望する仕事に就けることは稀です。

しかし、一旦自分のキャリアに関する意志をもった若者の一部は、自分がしたい仕事につくまでには10年、20年かかる、早く経験を積みたいと転身します。90年代の後半は、インターネットという誰もが未経験の産業が勃興し、年齢や経験よりも才能とやる気で道が拓けるようになるタイミングでした。多くの若い人材がそうした新しい産業に流れたこともあって、新卒から3年で約3割の若者が転職する時代が訪れました。

その一方で、大企業で新卒採用に携わる方から、保守回帰的な傾向が最近出てきたと伺ったことがあります。「出世は望まない、報酬も安心して暮らしていけるだけもらえればよい、それよりもプライベートの人生を大切にしたい」というワーク・ライフ・バランス重視、寄らば大樹の陰という志向で、日本型の大企業を志望する新卒入社組みがここ数年目立つのだそうです。この話を伺ったのは、リーマンショックに象徴される昨今の不況が顕在化する1年くらい前のことですので、転職難の状況を踏まえての意識の変化とは言えません。

少し前の新聞スラップを見返すと、朝日新聞の報道では、「人より多くの賃金を得なくても食べていけるだけの収入があれば十分だ」との問いに、47.1%の新入社員が「そう思う」と答え、2006年にこの質問を始めて以来最高の値になり、「年齢・経験を重視して給与が上がるシステム」を希望するとの回答も48.1%で1991年の調査開始以来最高になったそうです(生産性本部調べ。2010年1月20日朝刊)。この傾向に反比例して起業家志向は減り、「一流企業に勤めるよりも、自分で事業をおこしたいか」の問いに、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と答えた20代は35%で、1997年の49%から毎年減少して過去最低だそうです(野村総研調べ。同年1月17日朝刊)。

キャリア意識の強い方々と保守回帰と、若者の志向が二極化の傾向にあるのでしょうか。同一人物の中で、場合によって両方の志向がせめぎ合っているというほうが正確なのかもしれません。いずれにしても、それらは次回に述べる30代の方々の悩みに連捷した志向と言えるでしょう。