Career Leaves ブログ

キャリアプランを真剣に考えたいあなた、失敗しない転職活動をしたいあなたと向き合い、共に考えます。

キャリア形成は偶然から始まる

5月のある昼下がり、大手町界隈の喫茶店に入ったときのことです。隣のテーブルは、いわゆる「就活」中の学生が2人。聞くとはなしに、彼らの会話が耳に入りました。

就活も、もう終盤だよね。説明会の予約受付サイトも、前はどこ見ても「満席」表示だったけど、今週は「空席あり」が目立つし・・・。
(提出したエントリーシートのファイルを相手に見せて)オレなんか、100社を超えたぜ。見ろよ、最初の頃なんか、子供みたいな内容だった・・・。
(履歴書の)下書きの鉛筆書きを消し忘れてさ、慌てて消そうとしたら相手はそのままでいいですよ、って。こないだ受けた金融系だったら、間違いなくアウトだったよな。昨日出したのはエンタメ系だから気にしてないみたいだったけど・・・。
それにしても今日の面接。一緒になったヤツら、応募要領に面接での質問事項が書いてあったのに、読んでなかったみたいでさ、「そんなのあったんですか!」って慌ててたよ・・・。

就活の第一歩はエントリーシートを提出して、企業説明会に出席すること。多くの企業が、インターネットから受け付ける仕組みになっていて、説明会の予約は早いもの勝ちです。まるでコンサートのチケット予約でもするように、予約の受付開始時間になると、学生は大学の講義中でもPCや携帯電話を操作する、そんな光景がこのシーズンの日常と聞いています。

エントリー100社以上は当たり前、とも聞いています。100社に応募するということは、自分の適性やしたいことを踏まえて候補企業を吟味した上で、というよりも眼に留まったところを手当たり次第に、という様相です。その結果として、不備な履歴書を提出したり、面接の質問事項などの事前情報を見落としたり、と自らチャンスを潰すようなミスも引き起こします。

そんなことでいいのか…と暗澹たる気分になりますが、改めて思い起こしてみると筆者を含め、大多数の人は新卒時代、漠とした憧れやあまり根拠のない目的意識を頼りに、ある職業または企業を選択したのが本音ではないでしょうか。企業や働くことの実態を経験していない段階での選択ですから、無理もないことかもしれません。「ご縁」ということばがありますが、就職・転職においても、ご縁の要素は大きいです。その、縁あって偶然選んだ職場で、私たちは職業体験を重ね、その人なりのキャリアを積んでゆきます。

スタートは偶然の選択だったとしても、次第に遣り甲斐を感じたり、この仕事こそ自分の天職と思えるようになり、その仕事を続ける方々がいらっしゃいます。一方で、ある職業を体験し、その仕事に自分が向かない何かを感じたお陰で、自分の適性を鮮明に自覚し、別の職業に方向転換する方々もいらっしゃいます。あるいは、その職業が自分にとっての適職と自覚しつつ、所属する企業のカルチャーや事業方針、上司や同僚との相性の面で違和感を覚え、語義的には転職ではなく《転社》を試みる方々もいらっしゃるでしょう。期待する報酬や昇進が得られ、概ね満足しつつ定年まで勤続する幸運な方もいらっしゃる一方で、さまざまな不満を抱きつつ1社に定年まで勤めあげる方も、むしろこちらの方が多数派かもしれませんが、いらっしゃいます。不幸にして、本人の意志に関わりなく、業績不振や事業方針の転換により転職を考えざるを得ない状況に直面する方、社内の配置転換で悩む方もいらっしゃいます。

もちろん、その人なりの明確なキャリア形成の意識やプランと、そしてなによりもご本人の努力があって、計画的に転職というステップを踏む方々もいらっしゃいます。たとえば、20代は戦略コンサルティングファームコンサルタントとして経験を積むことで企業の経営課題を解決するスキルを身につけ、かつMBAを取得し、30歳前後で事業会社の経営企画や事業企画部門に転身し、さらに将来は起業や経営者としてのポジションで転職を志向する方がその典型です。

そんな華々しいプランでないとしても、向上心のある多くの方は、エンジニアの方でいえば、若いうちはシステムの受託開発会社でプログラミングなど技術力を十分につけ、ITコンサルタントやプロジェクトマネージャーを目指したり、エンジニアとしてさらに高度で最新の技術に挑戦できる仕事を求める技術志向の方もいらっしゃるでしょう。人事系の方で採用人事を担当している方でしたら、人事・評価制度や労務、福利厚生などに経験の幅を拡げ将来人事マネージャーとして人事業務全体をリードできるスキルを身につける道を求めて転職を考えるでしょう。さらに、自分がその企業で残した業績や地位にあぐらをかくことなく、この会社でできることはやり尽くした、新たな挑戦がしたいと仕事の達成感をバネに転職に踏み切る方もいらっしゃいます。

社会人人生は約40年。若い方にはリアリティを感じられない長さかもしれませんが、年配の方には振り返ってみるとあっという間の時間かもしれませんね。その40年の中で、誰にでも何度か、キャリアの転機が訪れます。その転機に際して、何を考え、どう行動するか。年収や地位が上がることが絶対の価値ではありません。あなた自身が納得して選択しているか、その結果が自分の人生としてハッピーかどうかの問題です。