Career Leaves ブログ

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転職氷河期の現状を知る:2

転職氷河期の高いハードルを越えるには、応募する企業やポジションを十分に吟味して、ご自身の実力や志向を見極めたうえでフィットする企業、つまり即戦力性が発揮できる企業のみにターゲットを絞ること、応募すると決めたら徹底的にその企業を下調べして、そのポジションに副うような自身の経験やスキル、やる気を職務経歴書に表現するなど、これまで以上に工夫が必要です。

しかし、残念ながら多くの転職希望者は、そのような現状を理解していません。日常的に転職市場の状況をウオッチし、人材紹介のコンサルタントと情報交換しながら現職の仕事を続ける方はあまりいらっしゃらないでしょうから、無理もありません。だいたい、そのようなことをしていては現職の仕事に身が入りませんし、転職市場の動向は必要に迫らなければ考えないことでしょう。そして、好むと好まざるとに係わらず転職を考えざるを得ない状況になって、慌てて転職活動を始めます。これも致し方のないことです。

過去に転職経験のある方でしたら、たとえば3年前に転職したときは、活動を始めるとどのくらい簡単に自分に合いそうな求人案件が見つかって、このくらいの期間で転職先を決められた、という体験に基づいて、ある意味とても楽観的な見通しで転職活動を始めがちです。今や、インターネット上の転職情報検索と人材紹介エージェントからの紹介が、転職先探しの主流になりました。一見、より取り見取りのように溢れる求人案件の束を前に、人材紹介エージェントの強引な勧めもあり、下手な鉄砲数打ちゃ当たる方式で、一社一社を吟味することなく一度に多くの企業に応募してしまいます。

その結果、ことごとく書類審査でNGになり、自分自身への自信を失くされる方も後を絶ちません。先日お会いした30歳の女性も、「このような厳しい転職環境だからこそ、できるだけ多くのポジションにまずは応募し、可能性を探らないと就職できませんよ」と、エージェントの口車に乗せられて、転職活動開始から1週間で複数のエージェントからおよそ30社に応募したそうです。結果は書類審査で全滅でした。しっかり準備してそのポジションに合うように職務経歴書をアレンジして応募していれば、書類審査は通ったかもしれない企業もあっただけに、ご本人も、焦って愚かなことをしてしまいました、と涙を流しておられました。

この下手な鉄砲は、不運にも(幸運にも、ではなく)たまに当たることがあります。しかし、無差別にばら撒かれた職務経歴書、経験やスキルが求めるものとうまく合っているとは言えそうにない職務経歴書に眼を留める企業とは、どのような企業なのかを考えてみてください。一流の企業は一流の人材、またはまだ一流ではありませんが一流になり得る人材を見い出そうとします。二流の企業は一流の人材を迎えたいと思いますがなかなか来てくれませんので、現実には同等の二流の人材、または二流になり得るポテンシャルのある人材を採用します。三流の企業は…(一流、二流というのは適切なたとえではありませんが、ご容赦ください)。つまり、企業は需要と供給の関係、自社のレベルに照らして採用のハードルを上げ下げするのです。

たとえば、事業の先行きに不安がある企業、マネージメントに問題があって人の出入りが多い企業、さらに法律や社会規範に反するスレスレのところで事業をしているような企業に、普通の方は応募したいと思わないはずです。そんな企業は思うように採用ができませんので、採用のハードルも下げます。打った下手な鉄砲の中には、不幸にしてそんな企業が含まれているかもしれません。

短期に30社応募するということは、企業名とポジションの概略だけ人材紹介エージェントのコンサルタントから聞いて二つ返事で応募し、それらの企業を調べてもいないでしょうから、上記の危ない企業に応募している自覚もないでしょう。そして、ことごとく書類審査で不採用の連絡を受ける中、面接します、と言われたら、30社に応募してたった1社が自分を評価してくれた、このチャンスを逃したらもう就職できないかもしれない、是が非でもこの企業に、と思うのが人情です。こうなると、面接を受けても冷静な判断は難しくなります。「後から振り返ると、大丈夫かなこの会社、という思いが微かにありました。でも、このまま就職できないことのほうが不安で、内定をもらうことが先決でした」とは、こうしたハズレくじを引いて入社し、結局、短期で辞めることになった30代の男性の言です。

応募するのも、入社するのも、決めるのはご本人です。しかし、なぜ今、転職するのか、そもそも転職する必要が本当にあるのか、自分はどのようなキャリアプランを描いて、転職という選択肢をどう捉えているのか、突き詰めて自分に問い、確信をもって行動に移される方がどれくらいいるでしょうか?