Career Leaves ブログ

キャリアプランを真剣に考えたいあなた、失敗しない転職活動をしたいあなたと向き合い、共に考えます。

キャリアの棚卸をしてみませんか

筆者は人材コンサルタントとしてこの4年で約千名のキャンディデイト(転職やキャリアの相談にいらっしゃった方々をこう呼びます)と向き合い、共に考える活動をしてきました。大半の方々は、日常は次々にアサインされる仕事や巻き起こる課題に追われ、立ち止まって自分がしてきた仕事の実績、してきた仕事のプロセスや品質を検証する余裕がありません。その結果、日々偶然の都合でアサインされる仕事に流されて年を重ね、否応なく転職を考えざるを得ない状況になって初めて、自分はどんな成果を挙げてきたのだろう、何を身につけてきたのだろう、これから何がしたいのだろう、そもそも自分に転職市場でどれほどの価値があるのだろうと慌てることになります。

こうした実情のなか、ほんの一部のキャンディデイトですが、コイツはできる!、と感心できる方々がいらっしゃいました。それらの方々に共通しているのは、ご本人が意識して実行しているかどうかはともかくとして、自分がしてきた仕事の検証する思考を常に働かせていることです。たとえば、ある仕事が一段落した際に、「自分はこんな目的・意図で、このように仕事を進めてきた、または課題に対してこのような対策を打った。その結果、この部分はうまくいったが、こちらはそうではなかった。その原因は何で、次の仕事ではこう改善したい。この仕事を通じて自分が学んだこと、得たスキルはこれだ、足りない部分はこれだ」という検証の思考です。これらを地道に実行した結果として、偶然体験したにすぎない仕事が経験やスキルとして蓄積され、その方の仕事力という血や肉になっていったのでしょう。これらの検証を通じて、取り組んでいる事業や所属している組織の中での自分の立ち位置、求められる役割と課題が明確にもなり、将来的に自分が進むべき方向も少しずつ定まったり、または方向性のズレを発見し軌道修正できたりするのではないでしょうか。

転職する・しないというテーマとは別の次元で、読者の皆さんにまずお勧めしたいのがこの検証作業であり、《棚卸》とここで呼ぶ一連の作業です。もう少し具体的に言うと、《棚卸》とは、あなたがしてきた仕事の検証をベースに、ご自分のできること、これからしたいこと、それを実現するステップを整理すること、つまり、キャリアプランを組み立てたり、見直したりするための作業です。どうすれば仕事がうまくいき、達成感・充実感を得られるのか悩む方、このまま現職に留まっていていいのか、と漠とした不安を感じる方、今まさに転職しようかと考えている方は、抽象論で思い悩んでいても答えは見いだせません。結局のところ、あなたがこれまで経験した具体的なことがらから、あなた自身の答えを導かなければならないのです。あなたがこれまでどんな仕事をして、どんな実績を残し、その過程でどんなスキルを身につけてきたのか、どんなときに遣り甲斐や喜びを感じたのか、そのあなたが今現在、現状のどんなことに行き詰まりや不満を感じるのか、どうしたいと考えるのか、を一つずつ確認し、今後のキャリアプランと転職の是非を判断するベースを作る作業です。もっと踏み込んで言うと、あなたの人生にとって職業とは何か、社会人としての自己実現とはどのようなことか、を正面から考える作業でもあります。

この棚卸は、今まさに転職活動を始めようとしている方、現に活動している方にはさらに切実な課題です。自分ができること、したいことを明確にして初めて、転職市場における自分の価値といいますか、どんな企業のどのようなポジションが自分にとって可能性があるか、判断できます。企業が中途採用者に求めるのは、一義的には即戦力性です。限られた採用ポジションに多くの求職者が応募し、相対的に採用の基準が高くなる買い手市場、求職者にとっては転職氷河期が今の現実ですので、この即戦力性はより一層厳密に問われます。つまり、この応募者を採用すると自社にどれだけの利益をもたらすことが期待できるかです。職務経歴書などの選考書類においても、面接の場でも、それらを論理的にプレゼンすることが求められます。その基礎作りが、棚卸の作業になるのです。

40年という長い社会人人生において、選択肢として転職を自らの意志で考慮するとき、好むと好まざるとに係わらず考えざるを得ないときが、一度か二度は誰にも訪れるでしょう。私たち職業人は、こうした転機が訪れたら上手に、間違いのないように自分と向き合わなければなりません。その際に、というよりもこうした転機は時として不意に訪れることもしばしばですので、いざという時に慌てないよう、常日頃からぜひ実行していただきたいのが棚卸という作業でもあります。

まとめると、棚卸は社会人人生のさまざまな場面で役に立ちます。

日常、スキルアップを考える上で:

  • - 現在の自分の立ち位置を明確にでき、今後伸ばすべきスキルや獲得すべきスキルを確認できる
  • - キャリアの方向性を確認し、計画的にスキルアップを図れる
  • - 不意に転職せざるを得ない状況になっても、素早く対応できる

転職を考えるとき:

  • - 転職市場での自分の価値、転職の方向性を確認できる
  • - 職務経歴書に自分を的確にまとめられ、面接の際も論理的に自分を説明できる
  • - 失敗しない転職を実現するためのベースを作れる

では棚卸とは具体的には何をどうすることなのでしょう。棚卸のフェーズは、大まかに以下のようになるのではないでしょうか。

  • 第一段階: これまでの職務経験を振り返り、自分の強み/弱みを整理する
  • 第二段階: これからしたいことを明確にし、上記を踏まえてキャリアプランを組み立てる
  • 第三段階: 以上の結果を職務経歴書、またはキャリアプランとして文書に落とし込む

次節では、棚卸のプロセスにしたがって考えかたを説明します。具体例を交え記載しますが、それらはアプローチのしかたをイメージしやすくするための一例に過ぎず、この切り口で、このレベルで落とし込むということではありません。できることなら、あなたらしい切り口で、より深く、具体的に落とし込んでいただきたいです。