Career Leaves ブログ

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転職氷河期の現状を知る:1

本題の「キャリアの転機」という話の前に、現在の転職市場の状況についてまず説明したいと思います。リーマンショックに象徴される昨今の不況の影響は、転職市場にも深刻な影響を及ぼしています。これまでの不況は、ある業界や職種に打撃を与えても、別の業界や職種は堅調で転職市場のニーズもありました。たとえばバブル崩壊の際は、金融、不動産業界を中心に不況の波を被りましたが、企業のIT化推進の流れがあって、コンピューターメーカーやシステムインテグレーションなどのIT企業、輸出関連企業を中心に産業全体の落ち込みを支えました。しかし、現在の不況は全業種、全職種に影響を与えています。

「業界、職種を問わず求人ニーズが落ち込んでいる。こんなことはこれまでなかった」とは、この道二十数年のあるヘッドハンターの言です。金融業界、外資系企業に止まらず、製造業、輸出関連企業などに拡大し、不況により国内消費も冷え込んであらゆる業界が不況に見舞われています。わずかにその影響が少ないところとしては、インターネット関連業界と製薬・医療業界くらいでしょう。転職市場もこの動きに連動し、2008年前半から、外資系企業を中心に中途採用を抑制する動きが出始め、その秋のリーマンショックで顕在化し、日本企業にも拡大していきました。時を同じくして、2008年後半よりリストラ、早期退職者の募集などで転職希望者が市場に溢れ、2009年は、転職希望者にとって氷河期とも言える状況を迎えました。

これまで人材紹介のコンサルタントをしてきた筆者の感覚では、2009年の夏が転職市場のどん底で、秋以降、新たな動きが少しずつ出始めて、回復の兆候があるように希望的観測も含め感じられます。2010年も回復基調が続いていますが、あくまでも少しずつの動きであり、限られた採用ポジションに多くの人材紹介エージェントが群がり、求職者の応募が殺到している状況に変わりはありません。

業界・職種を問わず各社とも募集人員が減り、リストラ等で求職者が転職市場に溢れている分、選考の競争率が高くなっています。これは単に数の問題だけでなく、通常なら転職を考えない、つまり現職企業で十分評価されていて昇進のレールに乗っている優秀な方も、希望退職制度に応募したり、何らかの理由で自社の将来性に不安を感じ、自ら早期の転職を考えて行動に移す方もおられ、求職者の質も相対的に高くなっています。その結果、採用のハードルはどこの企業も高くなっています。

大雑把なたとえ話で申し上げると、例年、10名中途採用する企業があるとして、10名均質にあるレベルを超えた方のみ採用するのは簡単ではありませんので、採用される10名は多かれ少なかれ以下のような層に分かれます。

  • (a) 求める経験・スキルをほぼ兼ね備え、このキャンディデイトならあすからすぐにでも結果をだせそう、ぜひ来てほしい、と採用になる方
  • (b) 求める経験・スキルの70%くらいは満たしており、まずまず合格点、と採用計画と採用状況の達成度を見ながらの判断になりますが採用になる方
  • (c) 求める経験・スキルが十分あるとはいえないが、若く、人柄もよく、やる気もあるので、そのポテンシャルを買われて、育つことを期待されて採用になる方

ところがそうした企業が、今年は3名しか採用しません、あるいは、求める要件にぴったり合致する即戦力の人材が見つかれば採用しますが、見つからなければ当面は現整員でしのぎますという状況です。この場合、採用になるのは(a)のレベルの方、つまり即戦力になるスキルと実績を採用担当者に示せたキャンディデイトのみです。例年なら十分に採用の可能性のある(b)の方、またはそれ以外の方がた、言い換えると、即戦力になるスキルと実績を示せない方は、20社応募しようが、30社応募しようが、書類すら通らないのが実情です。

採用側には例年の数倍の応募が殺到している状況だそうです。積み上げられた応募書類を前に、採用担当者がまずしなければならないことは、面接する候補者をいつも以上に厳しく、場合によっては機械的に絞ることです。その第一の方法は、経験やスキル、実績など募集要件にほぼ合致していそうな応募者に面接を絞ること、第二に転職回数や出身大学だけ見て機械的足切りすることです。これまで外資系企業は、仕事で実績を挙げてきた方には転職回数が多くても寛容な傾向がありましたが、最近は3回以内、などの基準を設けるところが増えています。

東京大学卒、転職歴なし、外資大手IT企業で働く30代前半の有能なエンジニアを、あるソフトウエアメーカーに紹介したことがありました。例年でしたら、募集に該当ポジションがなくても、可能性を探りたい、場合によってはポジションを作ってお迎えしたいという柔軟性のある成長企業ですが、「経験してきたソフトウエアの領域が少し違います。今は要件にピッタリ合う方しか選考できません」と面接に進めませんでした。数年採用のお手伝いをしてきた企業でしたら、どのような人が採用確度が高いのか、ボーダーラインはどの辺なのか、筆者は感覚的に把握しています。

この方は採用の可能性が高い、少なくとも書類審査は先方も期待感をもって通すはずと判断して応募したのですが、予想通りに進めませんでした。つまり、それだけ選考の基準が上がっているのです。職務経歴書だけではその方の真価はわからないのでお会いして判断します、といつもなら間口を拡げて先行してくださる企業も、採用が極端に抑制されている現状では、あまり寛容な対応ができにくくなっています。